こだわりの素材

桐生を感じる「素材」、職人たちとともに

 

シルクを始めとした原材料、糸を形作る撚糸、表現の幅を広げる染め。たくさんの職人さんたちに支えられながら、私たちは今までも刺繍を生業にしてくることができました。

 

「糸のアクセサリー」を作る上で欠かせないのが、最高の素材、糸です。そこに徹底的にこだわることができるのは、桐生で築かれてきた織物産業の土台があるからこそ。トリプル・オゥが目指すのは、桐生という町で彼らとともに生きていくことです。



初めて「糸」から作ったときのこと



桐生を支える繊維産業は、分業制によって成り立ってきました。原材料を作る方々、撚糸、染色。それぞれの職人たちが仕事をきっちりとこなすことで、最高の織物が世の中に生まれてきたのです。トリプル・オゥでも、数多くの糸の中から自分たちのイメージに合う糸を探し出してアクセサリーを作っています。

 

ところが、あるとき、私たちの思い描く素材がどこにも存在しなかったことがあったのです。

 

求めていたのは、麻の質感。しかし、リネン100%の糸は節が硬く、刺繍の機械で縫うのが難しい。さらに、アクセサリーとして身に着けたときにも、ゴワゴワしたりチクチクしたり……着け心地という部分でも問題がありました。なめらかな着け心地を持ちながら、リネンらしい温かみのある糸。どこを探しても、これだ!という糸は見つかりませんでした。

 

そこで私たちが向かったのが、紡績メーカーさん。相談しながら作ったのは、シルク6割、リネン4割を組み合わせたオリジナルの素材でした。求めていたリネンの風合いはもちろん、糸の強度や着け心地まで考えて、これだ!と心から思える糸。それが現在、トリプル・オゥにある『シルクリネン』という素材です。

 



アクセサリーの印象を決める染めにもこだわりました。染め職人さんと一緒に、ああでもない、こうでもないと試作を繰り返してできたリネンらしい優しい風合い。動物性のシルクと植物性のリネンの特性をいかし、リネンを染まらないような染めを施し風合いにこだわりました。



 

140年ものあいだ織物産業に携わってきた私たちですが、糸づくりから取り組んだのは初めて。これまで分業制の中で交わることのなかった職人たちが、それぞれの知識や技術を持ち寄ってひとつのものを作り上げる。そんな新しいものづくりの形が見えた瞬間でした。



同じ目線、同じ立場の仲間たちと

 

それから、私たちはたびたび撚糸職人さんや染め職人さんを訪ねています。新しい素材の相談をしたり、彼らの作った糸からできあがったアクセサリーを見てもらったりするのです。

 

自分たちが関わった糸がどんな商品になるのか。これまでのきっちりとした分業制ゆえに、ほとんど知ることがなかった職人さんたち。アクセサリーになった姿を見せると、とても喜んでもらえます。

 

思い返せば、私たちもトリプル・オゥとしてアクセサリーを作り始める前は、自分たちの刺繍がお客様に届くところまでを見届けることはありませんでした。アクセサリーを作るようになって初めて、直接お客様と対話でき、喜ぶ姿が見えるようになったこと。それが、どんなに誇らしさや喜びにつながるのかを、私たちは知っています。

 

トリプル・オゥと一緒に仕事をすることで、職人さんたちが今まで以上に自分たちの仕事に誇りが持てたなら。アクセサリーという新しい形で素材や技術を活かすことが、巡り巡って地域の経済だけでなく、職人たちの「心」の活性化につながったなら。それは経済的に成り立つのと同じくらい、もしかするとそれ以上に大切なことかもしれません。

 

トリプル・オゥのアクセサリーを形作る素材の向こうには、私たちと同じ目線、同じ立場で、身につける人の顔を浮かべる職人たちがいます。お客様に喜んでもらう誇らしさを、桐生の仲間と一緒に分かち合いたい。そんな思いが私たちのなかに芽生えています。

 



地域とつくる最高の素材が、また桐生をつくっていくと信じて

 

トリプル・オゥが目指すものに「地域の一番星」があります。それは、トップに立ちたいということではなく、地域を巻き込んで突き進む一番星になりたいということ。みんなが追いかけ、目印にして前へ進むような一番星です。

 

桐生の魅力は、小さいけれど技術ある職人さんがたくさんいること。その技術を、どう活かすか、どう組み合わせるか。結びつき次第で、糸という素材の可能性は無限大です。例えば、シルクリネンのように新しい素材を組み合わせたり、今までになかった染め方を見つけたり。生まれる革新すべてに、桐生らしさが詰まっている。そんな素材を、トリプル・オゥは職人さんと一緒に作っていきたいのです。

 

私たちが得意とする「技術と発想」で、まだまだ新たなイノベーションは起こせます。それが、桐生という地域で新しい素材やものづくりの形を生み、職人さんに仕事と活力をもたらす。仕事があるということは、今ある技術を継承していくことにもつながる可能性もあります。そうやって、桐生という町全体が盛り上がり、ますます好きな町になっていったら……。

 

最終的に私たちは、この桐生を誇らしく思える人々の気持ちを作りたいのかもしれません。職人が生き生きと働き、イノベーションが生まれ続ける町。そんな桐生で生まれるアクセサリーは、お客様も幸せにできると信じているのです。

 

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